コールセンターの新規立ち上げや、委託先(BPO)の切り替えを検討する際、多くの企業担当者が頭を悩ませるのが「コストと品質をどう両立させるか」という問題ではないでしょうか。
特にその中核となるのが「入電数に対して、何人のオペレーターが必要なのか」という人員算出の精度です。
人員が不足すれば、
- 電話がつながらない
- 待ち時間が長い
- クレームや顧客満足度の低下
といった問題が連鎖的に発生します。
一方で、過剰に人を配置すれば、今度は
- 不要な人件費
- 稼働率の低下
- コスト構造の悪化
を招いてしまいます。
本記事では、
- 適切な人員数を導き出すための基本ロジック
- 理論値だけでは足りない理由
- 外注(BPO)を検討する際に必ず確認すべき3つのポイント
について、実務に即した形で分かりやすく解説していきます。
目次
1.人員算出の基礎:入電数から「必要な工数」を可視化する
∟1-1.なぜ人員算出が難しいのか
∟1-2.平均処理時間(AHT)の把握が必須
∟1-3.稼働率と占有率のギャップを考慮する
2.応答率の壁:なぜ「呼量÷AHT」以上の人数が必要なのか
∟2-1.理論値どおりに配置すると何が起きるのか
∟2-2.呼損率とサービスレベル(SL)の考え方
∟2-3.ピークタイムへの対応が品質を左右する
3. 委託先選定の極意:人員最適化に向けた3つのチェック項目
まとめ
1.人員算出の基礎:入電数から「必要な工数」を可視化する

1-1.なぜ人員算出が難しいのか
コールセンターの人員算出が難しい理由は、「電話対応」という業務が単純な作業時間の積み上げでは測れないからです。
問い合わせ内容のばらつき、時間帯ごとの入電集中、オペレーターのスキル差など、複数の変数が絡み合っています。
その中でも、最低限押さえておくべき基礎指標が「工数」です。
1-2.平均処理時間(AHT)の把握が必須
人員算出において、入電数(呼量)だけを見て判断するのは非常に危険です。
重要なのは、1件の問い合わせを完結させるまでに、どれだけの時間を要しているかです。
この指標が「AHT(Average Handling Time:平均処理時間)」です。
AHT(平均処理時間) =
- 通話時間
- 保留時間
- 後処理時間(ACW:After Call Work)
これらをすべて合算した時間を指します。
具体例で考えてみる
- 1時間あたりの入電数:10件
- AHT:15分(900秒)
この場合、1時間に必要な総工数は
10件 × 15分 = 150分 となります。
つまり、1時間あたり150分分の労働時間が必要ということです。
理論上は、【150分 ÷ 60分 = 2.5人】のオペレーターが必要、という計算になります。
しかし、ここで算出された人数は、あくまで「理論値」にすぎません。
1-3.稼働率と占有率のギャップを考慮する
オペレーターは、1時間の勤務時間すべてを通話に使えるわけではありません。
- 休憩時間
- 朝礼・ミーティング
- 研修
- システム入力や事務作業
など、「顧客対応以外の時間」が必ず発生します。
そこで重要になるのが「稼働率」です。
稼働率とは、
給与を支払っている時間のうち、実際に顧客対応が可能だった時間の割合
多くのコールセンターでは、【稼働率80〜85%程度】を目安に設定します。
仮に稼働率80%で計算すると、先ほどの「2.5人」という理論値は【2.5 ÷ 0.8 = 約3.1人】 となり、最低でも3人以上が必要であることが分かります。
ここを考慮せずに人員を組むと、現場はすぐに逼迫し、「常に忙しい」「余裕がない」状態が常態化してしまいます。
2.応答率の壁:なぜ「呼量÷AHT」以上の人数が必要なのか

2-1.理論値どおりに配置すると何が起きるのか
「工数的には足りているはずなのに、なぜ電話がつながらないのか」
これは多くの現場で聞かれる疑問です。
原因はシンプルで、電話は均等な間隔でかかってくるわけではないからです。
2-2.呼損率とサービスレベル(SL)の考え方
コールセンターでは、応答品質を測る指標として以下が使われます。
- 呼損率
かかってきた電話のうち、つながらなかった割合 - サービスレベル(SL)
「◯秒以内に◯%の電話に応答する」といった目標指標
例:20秒以内に80%の電話に応答
これらを管理する際に用いられるのが、
アーランC式という確率論モデルです。
アーランC式では、
- 入電数
- AHT
- 目標サービスレベル
をもとに、待ち時間が発生する確率を計算します。
顧客満足度を重視するコールセンターでは【応答率90%以上】を目指すケースが一般的です。
先ほどの例で算出した「理論上2.5人」という人数では、ピーク時に必ず待ちが発生します。
実務的には【3〜4人程度を配置】して初めて、安定した応答率を維持できるケースが多いのです。
2-3.ピークタイムへの対応が品質を左右する
入電には必ず「波」があります。
- 午前10時前後
- 昼休みの時間帯
- テレビCM放映直後
- Webキャンペーン開始直後
平均値だけを基準に人員を決めてしまうと、ピーク時に呼損が多発し、「つながらないコールセンター」という悪印象を与えてしまいます。
委託先(BPO)を検討する際は、【ピークタイムに柔軟なシフト調整が可能か】という点も、必ず確認すべき重要項目です。
3. 委託先選定の極意:人員最適化に向けた3つのチェック項目

コールセンターを外部委託する最大の目的は【コスト最適化と品質維持の両立】です。
しかし、「安いから」という理由だけで選んでしまうと、
- 応答率の低下
- 機会損失
- ブランド価値の毀損
といった形で、結果的に高くつくケースも少なくありません。
① 人員算出の根拠に透明性はあるか
見積書に記載されている人員数について、
- どのサービスレベルを想定しているのか
- アーランC式などの算出根拠があるのか
を必ず確認しましょう。
「経験則です」「他社もこのくらいです」といった説明しかできないベンダーは要注意です。
② 呼損を減らす「技術的な解決策」を持っているか
人件費を抑えつつ応答率を維持するには、テクノロジーの活用が不可欠です。
- IVR(音声自動応答)
要件別に適切な窓口へ誘導し、無駄な転送や対応を削減 - チャットボット・FAQの整備
よくある問い合わせを自己解決させ、入電数そのものを抑制
こうした施策を組み合わせることで、
「人を増やさずに品質を上げる」ことが可能になります。
③ 業務改善(プロセス効率化)の提案があるか
優れた委託先は、単に人を配置するだけではありません。
- ACW(後処理時間)の短縮
- マニュアルの最適化
- CRMやCTIの改善提案
など、AHTそのものを短くする提案をしてくれます。
結果として、
- 応答率向上
- 人員削減
- コスト改善
のすべてにつながります。
まとめ
コールセンターの適正人員は、
- 入電数
- AHT
- 目標とするサービスレベル
この3要素をもとに、データドリブンで決める必要があります。
委託先(BPO)を選定する際は、
実績や価格だけでなく【KPI管理・人員算出・業務改善まで一貫して支援できるパートナーかどうか】 を見極めることが、最終的なコストパフォーマンス向上に直結します。
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